グーグル、サーチインサイドユアセルフ

グーグルで開発されたサーチインサイドユアセルフ(SIY)は、自己認識力・創造性・人間関係力を高めるアプローチとして、グーグル社内のみならず、SAP・アメリカンエキスプレス・LinkedInなどからも支持され、ニューヨークタイムズなどのビジネス誌でも高く評価される最先端のプログラムとなりましたが、瞑想というものを身近なものとしてビジネスの現場でも簡単に取り組めるようにしてくれた素晴らしいプログラムではないでしょうか。

私自身は普段からマインドフルネス瞑想をやっているのでその効果は何となく実感はしていますが、「サーチインサイドユアセルフ(仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法)」を読んで、私生活だけでなくビジネスの現場でも効果があることを改めて再認識することができました。

また、このサーチインサイドユアセルフ(SIY)は、マインドフルネス(今の自分に集中する状態)の実践法に加えて、ベストセラーになったダニエルゴールマン氏の「EQ(こころの知能指数)」で提唱されているEQの5つの領域を高めるプログラムにもなっていて、自分一人でも実践できるものになっているので、一読の価値はあると思います。

というのも、ダニエルゴールマン氏はサーチインサイドユアセルフ(SIY)プログラムの支援・監修をされていて、この本の序文の執筆も担当されているので、EQに興味をお持ちの方にもスラスラと読み進められる本になっているのではないでしょうか。

グーグルで開発されたサーチインサイドユアセルフ(SIY)とは

サーチインサイドユアセルフ(SIY)は、マインドフルネスの実践法に加え、EQの5つの領域(自己認識・自己統制・モチベーション・共感・社会的技能)を高めるための科学的なプログラムです。

サーチインサイドユアセルフ(SIY)のカリキュラムに基づいて得られるもの

サーチインサイドユアセルフ(SIY)によって、以下のような事が高められると言われています。

~書籍より抜粋~

  • 意のままに心を鎮める方法を学べる
  • 集中力と創造性が向上する
  • 自分の心のプロセスや情動のプロセスをしだいに明瞭に近くできるようになる
  • 自信は鍛錬を積んだ心の中に自然に沸き起こるものであることに気付く
  • 自分の理想の未来を見いだしたり、成功に必要な楽観と回復力(レジリエンス)を育んだりすることを学ぶ
  • 練習によって共感の力を意識的に高められることを発見する
  • 社会的な技能は訓練によって十分身に着けられることや、他人に愛してもらいやすくできることを学ぶ

~抜粋ここまで~

これだけのものを得られるなら実践しないと損、と思ってしまいますが、マインドフルネス瞑想を普段からやっている私的には何となくわかるような気がします。

サーチインサイドユアセルフ(SIY)の3ステップ

サーチインサイドユアセルフ(SIY)は次の3つのステップで構成されていますが、どれもEQの5つの領域に深く関わる内容となっています。

1.注意力のトレーニング

2.自己認識と自制

3.役に立つ心の習慣の創出

そもそもEQの5つの領域とは

ダニエルゴールマンによるEQの五つの領域の分類

  • 自己認識(自分の内面の状態、好み、資質、直感を知ること)
  • 自己統制(自分の内面の状態、衝動、資質を管理すること)
  • モチベーション(目標達成をもたらしたり助けたりする情動的な傾向
  • 共感(他人の気持ち、欲求、関心を認識すること)
  • 社会的技能(他人から望ましい反応を引き出すのに熟達していること)

マインドフルネスの実践によって、これら5つの領域に関わる能力を高めていこうとするプログラムがサーチインサイドユアセルフ(SIY)です。

マインドフルネスとは

そもそもマインドフルネスとは、今そのことに心が集中している状態の事で、不安や心配や恐れなどがなく邪念が取り払われているような状態の事を言い、マインドフルネス瞑想などを行う事でそのような状態を維持できるようになると言われています。

さらに言うと、マインドフルネスな状態とは、雑念を持たず、過去や未来の事にとらわれず、リラックスして、ただ今その瞬間だけに集中して研ぎ澄まされている状態と言えます。

※参考:マインドフルネスとは何か?【初心者向けまとめ】/生き方・働き方を模索する人のWEBマガジン

マインドフルネス瞑想の実践

マインドフルネス瞑想とは、

・楽な姿勢で座り

・呼吸に集中し

・何か思考が浮かんできても深く考えずにそのことは放っておきまた呼吸に集中する

と言葉で説明するとこのような簡単な説明になってしまうのですが、マインドフルネス瞑想をする際のプロセスは以下の図のような状態を繰り返すことになります。

~サーチインサイドユアセルフ(SIY)より抜粋~

マインドフルネス瞑想のプロセスモデル

~抜粋ここまで~

しかし、文章で説明されてもいまいち、マインドフルネス瞑想のやり方は理解できないと思いますので、私が毎朝YouTubeを見ながらやっている誰でもできるマインドフルネス瞑想をご紹介いたします。

いずれもヨガのインストラクターをされているヨガの先生ですが、要所要所で雑念に振り回されてしまいそうな私の心を、再び呼吸に集中するように引き戻してくれる声がけをしてくれるので、とても気分よく毎朝の瞑想を行うことができています。

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頭スッキリ!簡単マインドフルネス瞑想10分、初心者向け

自信につながる自己認識

ダニエルゴールマンは自己認識の領域は以下の3つと述べています。

  • 情動の自覚(自分の情動とその影響に気付くこと)
  • 正確な自己査定(自分の長所と限界を知ること)
  • 自信(自分の価値と能力を強く実感すること)

特に、正確な自己査定は「自己客観性」ともいわれ、管理職につくような人に求められる要素となります。

この自己認識力を高める方法として、「ボディスキャン瞑想」「ジャーナリング」などの瞑想エクササイズが紹介されています(詳しくは、本をご覧ください)。

自己統制の力を伸ばす(情動のコントロール)

ダニエルゴールマンは自己統制の領域で以下の5つの情動的能力を挙げています。

  • 自制心(破壊的な情動や衝動を抑える)
  • 信頼性(正直さと誠実さの基準を維持する)
  • 良心性(自分の振る舞いに責任をとる)
  • 適応性(変化に柔軟に対応する)
  • 革新性(新奇な考え方やアプローチや新しい情報を気兼ねなく受け入れる)

自己統制とは情動(感情的になる行動)を避けたり、本当の気持ちを否定したり、特定の情動を抱かないように抑えつけるわけではなく、情動をコントロールできている状態のことをいいます。

つまり自己統制とは、言い方を変えれば、情動と仲良くなることを言います。

この自己統制力を高める方法としては、「シベリア北鉄道」というエクササイズが紹介されています(詳しくは、本をご覧ください)。

セルフモチベーションの技術

モチベーションを高めるために、3つの練習法が紹介されていますが、

  • 整合性(自分の仕事を自分の価値観や崇高な目標と整合させる)
  • 想像(自分にとって望ましい未来を思い描く)
  • 回復力(自分の行く手に待ち受ける障害を克服する能力)

上記の3つを組み合わせることで自分が本当に望んでいるものを突き止め、モチベーションを維持できるようになる、という事ですが、以下のエクササイズが紹介されています(詳しくは、本をご覧ください)。

「価値観と崇高な目標を発見する」エクササイズ

「自分の理想の未来を見つける」エクササイズ

「回復力」のエクササイズ

また、章末で楽観主義を学習することの必要性も書かれていますが、私も同感でして、最近ではポジティブ心理学が一冊でわかる本という本を読んで、現実主義を持ち合わせた楽観主義の必要性についても学びました。

共感力を増す方法

「共感力は優しさとともに深まる。優しさは共感力の原動力で、相手に気遣うように人を動機づけます。相手に優しくすればするほど、相手とうまく共感できる。」と本の中で述べられています。

その共感力を高められる効果があるのは以下の4つのエクササイズになります。

・「私とまったく同じ」と「愛情に満ちた優しさ」の瞑想

・共感的なリスニングのフォーマルな練習

・共感的なリスニングのインフォーマルな練習

・政治的意識のエクササイズ

こちらもまた、詳しくは本をお読みください。

リーダーシップと社会的技能

「思いやりのあるリーダーシップこそが最も効果的なリーダーシップである」

とのことです。

ここでは社会的技能をリーダーシップと言い換えても良いと思いますが、そのリーダーシップを高めるための効果的なエクササイズとして以下の3つが紹介されています。

・善良さを増す瞑想

・トングレンの瞑想

・厄介な会話に備える

こちらもまた、詳しくは本をお読みください。

サーチインサイドユアセルフ(仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法)を読み終えて

マインドフルネスの実践法からEQの5つの領域の能力を高める実践的なエクササイズや考え方が、プログラム開発の中心であるチャディーメンタンによって解説されていますが、仏教的なイメージを持つ瞑想をビジネスの現場にも役立つエクササイズとして科学的に昇華させた開発チームは凄いと思いますし、だからグーグルという企業もまた、常に進化し続ける存在としてトップを走り続けられるのかなとも思いました。

本で紹介されているエクササイズを全て毎日のようにこなすことは容易ではないと思いますが、まずは毎日、マインドフルネス瞑想をこなしつつも必要に応じてそれぞれのエクササイズを生活の一部に取り入れてみようと思います。

「瞑想なんてスピリッチュアルな世界の話しには興味はない」なんて言う方も、この本を読んだらマインドフルネス瞑想へのイメージはガラッと変わるかもしれませんので、一読の価値はあるかと思います。

また、マインドフルネスに興味を持たれた方は、こちらの本もお勧めかと思います。

マインドフルリーダーシップインスティテュートの取り組み

日本においてグーグルのサーチインサイドユアセルフ(SIY)の実践を提唱し、マインドフルネスとリーダーシップ開発メソッドを提供しているマインドフルリーダーシップインスティテュート主催のマインドフルリーダーシップシンポジウム2020が2020年8月29日の土曜日、オンラインにて開催されましたが、チャディーメンタン氏の講演は心に響く、かつ瞑想やEQにも興味の沸きそうな内容のスピーチでした。