【コンパッション】を構成する重要な5つの資質とそれを育むGRACEとは

コンパッション、ジョアン・ハリファックス著 マインドフルネス

「コンパッション~状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く共にいる力~」(ジョアン・ハリファックス著)を読み、自分を犠牲にせずに人の役に立つにはどうすればいいのか、充実した人生を生きていくために必要な事を考えさせられる良いキッカケになりましたので、ここで紹介させて頂きます。

Compassion(コンパッション)――状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、「共にいる」力

コンパッションを構成する重要な5つの資質

コンパッションを構成する重要な5つの要素として、「利他性」「共感」「誠実」「敬意」「関与」が挙げられていますが、このどれもが必要不可欠なものとなるので、そのそれぞれについて著者のジョアン・ハリファックス氏ご自身の経験や研究に基づいて、その二面性(良い面・悪い面(あるいは怖い面))について具体的にわかりやすく説明されています。

利他性

利他性の良い面

本能的に無私の状態で他社のために役立とうとすること。

純粋に利他的な人は、役に立つことをしても、そこから何かを得ることはなく、本質的に無欲。ボランティアなどがその良い例ではないでしょうか。

利他性の悪い面

「病的な利他性」と表現され、承認欲求にとらわれたり、相手を依存させてしまったりする状態。

援助に過剰に手をかけ、自分の欲求に目を向けないでいると、助けている相手や現状が腹立たしくなってくることがよくあります。

しかしこれは相手にとって決して有難いことではなく、助ける側の自己満足や承認欲求を満たすための手段になっているだけ、となってしまう可能性があるので、気を付ける必要があります。

子供を育てる親、教師、医療関係者、司法制度に携わる人、危機的状況で働く活動家などが、他者の苦しみにさらされる機会が多いため、病的な利他性に陥るリスクが特に高くなるそうです。

熱い感情に基づく善意は、相手にとって本当に有益なことは何かという判断を誤らせる危険性があるので、いつまでも家に居る息子を親が追い出すような「厳しい愛」のアプローチのほうが、真に利他的だという考えもあります。

利他的活動をして疲れを感じたり誰かを責めるようになるぐらいだったら、いったん立ち止まって冷静に考え、まずは自分自身を満たしてあげることの方が必要な事なのかもしれません。

共感

「共感は、ありがたい恩恵と迷惑な侵略的介入のはざまに、いつも不安定に腰かけている」

~レスリー・ジェイミソン(1983年生、米国の小説家・エッセイスト)~

非常に良い例えではないでしょうか。

共感の良い面

他者の感情を感じ取る力。

共感の怖い面

「共感疲労」という言葉で表現され、相手の感情と一体化しすぎて自分も傷つく状態。

人道支援ワーカーや、支援を専門とする職業に携わる人には、共感疲労に陥る傾向が特に目立つそうです。

私は組織において人事という仕事もやっていますが、人の話しを聴き過ぎて、人の気持ちに寄り添い過ぎて心が疲弊してしまうことが稀にあるので、特にこの共感疲労には気を付けなければいけないと感じました。

また毎朝起きてからの瞑想を一年ほど継続してやってきていますが、集中力や切り替え力がつき、自分自身の状態を冷静に捉えられる習慣もついてきたので、この本の中でも随所で瞑想の効果が書かれていますが、確かに瞑想はお勧めの方法だと、実感をもってお勧めすることができます。

誠実

誠実の良い面

道徳的指針を持ち、それに一致した言動をとること。

誠実の怖い面

「道徳的な苦しみ」という言葉で表現され、正義感に反する行為に関わったり、目にしたときに生じる苦しみ。

本の中で、「誓いに従って生きると、道徳的感性が高まります。つまり、他者との関りや組織において、何が道徳に影響するかを見定め、問題に取り組むための洞察力や勇気をもつことが出来るようになるのです。」と書かれていますが、特に大事なことはこの「洞察力と勇気」という点ではないでしょうか。

会計数字の粉飾など企業不祥事に関するニュースを見るたび、人の道徳観というものの弱さを感じることがありますが、私が会計の仕事に携わる時などは、特にこの道徳観に従って判断ができるよう、常に注意するようにしています。

ただし、道徳観が行き過ぎてしまうと、他者との対立を深めてしまう可能性もあるので、組織の中ではそのさじ加減が難しいところかもしれません・・・

敬意

~敬意は私たちの人格を高め愛に心を開かせてくれる、人間であることの偉大な宝である。~

これ、とても良い言葉ですよね。

敬意の良い面

命あるものやものごとを尊重すること。

軽蔑(敬意の反対にあるもの)

自信の価値観と異なる相手を否定し、貶めること。

他者に敬意を表すには、正直に建設的に意思疎通をはかり、約束を守り、尊厳を大切にし、互いの選択や境界を尊重しなければなりません。

私は特に近い関係の人、夫婦や家族にこそまずは敬意を表す必要があると常日頃から考えていまして、それができれば自然と職場や友人関係など他者との関係においても敬意を表し合える関係を構築できると思っています。

その逆に、たとえ家族であっても他者であっても、軽蔑や侮辱など、相手を愚弄したり馬鹿にしたりする行為は避けるべき事だと思います。

また、本の中では、敬意を育む要素として言葉に気を遣う必要性も書かれていますが、私自身、改めて気を付けなければいけない事だと強く感じています。

正しく話すための五つの鍵

  1. その言葉は、真実か。
  2. その言葉に、思いやりはあるか。
  3. その言葉は、役に立つか。
  4. その言葉は、必要か。
  5. その言葉は、今言うべきか。

とても大事なことですよね・・・

関与

関与

しっかりと取り組むが、必要に応じて手放すこと。

燃え尽き

過剰な負荷や無力感に伴う、疲弊と意欲喪失。

組織においても他者との関係においても、また家族関係や親子関係においても、どこまで関与してどこで手放すべきなのか、非常に判断が難しいと思いますし、毎日がその鍛錬の繰り返しなのではないでしょうか。

ニューヨークの統計調査によると、医療現場における燃え尽きの蔓延は驚くほど高い自殺率につがっているそうで、一般に比べて男性医師で1.14倍、女性医師で2.3倍、自らの命を絶つ可能性が高いとの調査結果があるそうです。

志高く始めた仕事が原因で自分の命を絶ってしまうということは非常に残念なことだと思いますが、それだけ深く関与してしまったが故の燃え尽きという結果になってしまうのでしょうか。

著者はこのように言っています。

「仕事をマインドフルネスの実践の場としましょう。マインドフルな状態を保ち、無理をせず、必要なら身を引いてバランスを取り戻せばよいのです。患者に接するときやミーティングのときに、深呼吸をする。そうしたシンプルなことで、心の状態を切り替えることは可能です。」

「自分の価値観と仕事が一致しているか確かめましょう。ユーモアを大切にして、休暇も取りましょう。」

いったん休んで、いったん立ち止まって、自分を冷静に見つめなおす時間を常に持てるようにしたいですよね。

コンパッションはコンパッション以外の要素から生まれる

~本より抜粋~

コンパッションが生まれるためには、四つの条件があると確信しました。他者の経験に意識を向け、他者を案じ気遣い、相手に役立つのは何か感じ取り、他者の心身の健康を高めるための行動をする(行動できないとしても、その人のためにできる限りを願い、結果に執着しないこと)、の四つです。

つまり、注意力、向社会的な感情と私心のない意図、洞察力、体現は、コンパッションを構成するうえで鍵となる。

~抜粋ここまで~

他者との関係、そして他者への想いがあってこそ初めて自分の中に生じてくるものだと思います。

エゴイスティックに自分のことだけ考えて行動するのではなく、より高い視点と広い視野にたって物事を見るよう、日頃から心がける必要があるのではないでしょうか。

コンパッションを高め、育むためのトレーニング、GRACE

世界の見方、人生との向き合い方は、メンタルトレーニングや瞑想という神経可塑性を高める促進剤によって、根本から切り替えることができます。脳の可塑性によって、トラウマを乗り越え、新たな心のあり方を習得し、習慣的な反応パターンから自由になり、精神的に柔軟かつ機敏になる力を伸ばせます。

という視点に立ち、著者のジョアン・ハリファックス博士はGRACEというプログラムを開発しました。

Gather attention/注意を集める

一呼吸置いて、地に足をつける時間をもつよう促すプロセスです。

息を吸って、注意を集中させます。息を吐き、力を抜いて注意を身体に委ね、身体の安定している部分を感じ取ります。

※これは朝起きて5分の瞑想を実践するだけでも充分にその効果が現れてくると思います。

Recall our intention/意図を想い出す

誠実に行動する、出会った人々の誠実さに敬意を払う、という誓いを思い起こすプロセスです。

私たちの目的は、他者を支援し、自分たちの心を世界に向けて開くことだということを心に留めておくようにします。

Attune to self and then other/自らと調子を合わせ、それから相手と合わせる

波長を合わせるプロセスです。

まずは自分自身の身体、感情、思考の状態につながり、次に相手のそれぞれの状態につながります。

自分と他者の双方への同調が豊かであるほど、創造力も深まるはずです。

Consider what will serve/何が役立つか考える

冷静な理解に根差しつつ、私達自身の直感や洞察も加味し、適切な判断をするプロセスです。

結論に慌てて飛びつかず、何が役立つかをしっかりと考える必要があります。

何が相手に役立つか感じ取り、洞察力を働かせて、相手がこの瞬間に経験していることや感じていることを読み取るように努力します。

Engage and end/関与をもって実行し、完了する

相手に対して何か問いかけや提案をすることが必要な場合もあれば、逆に、何もしないことが慈悲に満ちた行為となる場合もあります。

自分の専門性、直感、洞察力を活かして、自らの価値観と一致し、互いに誠実さを保てる共通の土台を探すよう努めます。

Compassion(コンパッション)――状況にのみこまれずに、本当に必要な変容を導く、「共にいる」力

コンパッションを育むには瞑想がお勧めではないでしょうか

「利他性」「共感」「誠実」「敬意」「関与」の良い面を伸ばし、また悪い面・怖い面に足を踏み外さないようにするためには、やはりまずは確固たる自分を持ち、また信念を持って物事に臨むべきではないでしょうか。

そのために、本の中では瞑想の効果が随所で伝えられていますが、集中力を高め、自分自身と向き合う一つの手段として、個人的にも瞑想は多いに効果があると思っています。

毎朝の寝起きに15分間のマインドフルネス瞑想をやるだけでも、集中力や切り替え力、さらにはレジリエンスまで高まっていくので、私的には毎朝の欠かせない日課になっています。

著者、ジョアン・ハリファックス博士とは

仏教指導者、禅僧、人類学者。

ニューメキシコ州にあるウパーヤ禅センターの創設者で主管。

アメリカ国立科学財団で映像人類学の特別研究員、バーバード大学で医療民族植物学の名誉研究員、米国議会図書館の特別客員研究員も務めるなど、経験や経歴も豊富。

マインドフルネスやコンパッションを高めるGRACEなどの普及・推進活動も行うなど、幅広い分野で指導的立場として世のため人のために活躍されています。

コンパッションに関する参考サイト

マインドフルネスだけで成果は出ない ——今リーダーに求められる「コンパッション」とは

※ジョアン・ハリファックス博士へのインタビューが掲載されています

コンパッションとは?複雑な社会の中で必要な変化を促すための、自分と他者に「寄り添う」力 | Katsuiku Academy

日本GRACE研究会

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